【第1章】伝統を超えて ― はじまりの地インドネシア

― 直感が導いた、新たな布の旅 ―

2002年9月、私は一人、インドネシアへと旅立った。
目的地はバリ島・デンパサール。
伝統工芸「バティック」や織物「イカット」の新たな可能性を探るための視察だった。

現地では、手当たり次第に市場を巡り、工房の場所を聞いて歩いた。
しかし、工場の情報は簡単には得られない。
通訳に依頼を残して、また歩く。直感だけを頼りに、ひたすらに歩いた。

ある日、ジャワ島の旧王都ソロへ飛んだ私は、目を疑った。
「ある、ある、ある!」
目の前に広がる色彩豊かなバティックの数々。
心が震えるような面白い布との出会いが、そこにあった。

バティックに関しては、これで十分に素材の方向性が見えた。
次は帯になる織物を探す。ロンボク島にそのヒントがあるという情報も得た。

この時点で、私の頭の中ではもう商品が完成していた。
それは、単なる布の組み合わせではなく、文化と文化を繋ぐ新たな「物語」になるという確信をもって。

「1ヶ月後、必ず戻ります」
そう現地の職人たちに伝え、私は日本に帰国した。

スーツケースには、大島紬の生地20反、帯地20本を詰め込んで。

これが、「大島紬 × ジャワ更紗」というビジョンの旅の始まり。