【第3章】草木の色に染まる ― 新たな出会いと価値観の転換

― 絶望の先に、希望の色は現れる ―

失敗した初回の染めに落胆しながらも、私はあきらめきれず、再び新たな工房を求めて動き出した。
次に訪れたのは、ジャワ島ジョクジャカルタにある「ビクサー」という草木染めの工房だった。

工房は古びた土間にチャンチン(蝋描き用具)が無造作に置かれ、薄暗い空間だったが、心を惹かれる面白い図案がいくつもあった。
ここなら何かができるかもしれない、そう感じた。

しかし、話を聞くうちに工房が対応できるのは「小さな綿の布」だけで、着物のような長尺ものや絹素材の染めは未経験だという。
大島紬の反物を見せると、職人たちは興味深そうに眺めながらも「これはできない」と言った。

それでも諦めきれず、私は1本の帯を預けることにした。
図案を指示し、帯の太鼓部分と前帯に限定したデザインで試作を依頼した。

「これは何に使うのか?」と聞かれたので、写真を見せながら説明すると、職人のひとりが「これは亀の甲羅のようだ」と表現した。
文化の違いの中に、美しい感性の交差を感じた瞬間だった。

製作には前金が必要だった。言い値より多く渡し、「その代わり、きれいな物を頼むよ」と伝えた。
すると、彼らの表情が変わり、前向きなエネルギーが立ち上るのを感じた。

その後も、ジョクジャカルタの工房をいくつも巡った。
ある晩、偶然出会ったのが「IFFA(イファ)」という草木染工房の女性オーナーだった。

ここからまた新たな挑戦が始まった。

半年後、ようやく出来上がった訪問着は、右半分に草木染の模様が入っていたが、左半分は無地で、藍染の風合いが出ていなかった。
絹の持つ艶も失われ、まるで木綿のようだった。

私はついに覚悟を決め、「グンテン(ハサミ)を持ってきてくれ」と告げ、その場で反物にハサミを入れた。
「これは使えない」と判断し、自ら区切りをつけたのだった。

また失敗。
しかし失敗の中にこそ、次への布石がある。

そう信じて、私はさらにその先の出会いへと進み続けることになる――。